合成の誤謬から考える水道管老朽化問題。

私はよく、合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)について考えるのですが、皆さんは考えたことありますか。

てか、合成の誤謬ってなんやそれ。ってなっている方が、もしかしたら、多いかもしれないので、まずは言葉の説明から入ります。
野村証券の用語解説が分かりやすいので、そこから引用します。

合成の誤謬(ごうせいのごびゅう):ミクロの視点では合理的な行動であっても、それが合成されたマクロの世界では、必ずしも好ましくない結果が生じてしまうこと。

一応、ミクロとマクロの説明を載せときます。

ミクロ:個人や個別の企業
マクロ:政府、企業、家計を一括りにした、経済社会全体

めっちゃ噛み砕いて言うと、

「個人にとっては良くても、社会全体で「個人にとって良いこと」を進めると、結果としては良くないものになること」
これが、合成の誤謬です。

 

よく言われる有名な例ですが、貯蓄と節約で考えてみましょう。
個人で貯蓄や節約をすると、もちろん、その人の資産は増えます。
資産が増えると、よく言う老後への不安は減りますね。
ある程度貯金できたら、それを元手に何か新しいことに挑戦できるようになって、人生の幅が広がるかもしれません。これは個人にとっては良いことです。
でも、社会全体が貯蓄や節約をすると、国全体の消費が減ってしまうので、企業の売り上げが下がってしまい、従業員の給料が下がり、結果的には、国民の総所得が減っていってしまいます。国民の総所得が減るってことは、経済的に衰退してるということです。これは明らかに良くないことですね。
こんな感じで、「個人で貯蓄や節約をすることは、その人自身にとっては良いことだけど、社会全体で貯蓄や節約することは、社会にとって好ましくないこと。」が「合成の誤謬」です。

 

では、本題に入ります。水道管の話です。
最近、「市街地の水道管が破裂」みたいなニュースをよく見かけませんか。
つい先日も、横浜市でもありました。
なぜこんなことが起きているのでしょうか。

それは、言わずもがな、水道管の老朽化です。

水道管の耐用年数は40年で、日本の水道管は高度経済成長期(1955~1973年)に敷設されたままで、交換できていないものが多くあるのです。


日本に敷設されている水道管は、約67万km。
そのうち、交換の目安とされる40年を超えた古い水道管は、2018年の時点で、約10万km(地球2周半の長さ)はあると言われています。(もちろん、今は2021年なので、もっと増えていると思われます。)
「え、でも、橋とか道路、河川は結構綺麗になってるじゃん。」って思う方もいるかもですが、橋とか道路、河川を所轄する省庁と、水道管を所轄する省庁は、別なのです。(知らなかったでしょ)
橋とか道路、河川の所轄は、国土交通省で、水道の所轄は、厚生労働省
国土交通省は、ずっと前から、橋とか道路への補修費をしっかり積み立てているし、水道管よりは改修に取り組んでいる方だけれど、厚生労働省は、水道管の補修に積極的には取り組んでこなかったのです。
ちなみに、「老朽化した水道管を交換する費用は、1km当たり、約1億5000万円」と言われていて、今現在、水道料金が上がっているのは、その老朽化した水道管交換の予算確保や、人口減少が原因と言われています。

さて、ここで考えるのは、節水についてです。
「水道料金が上がっているから、節水を心がけて水道料金を節約しよう」は、本当に良いことでしょうか。

ちょっと「合成の誤謬」で考えてみましょう。
個人で節水をすると、もちろん、支払う水道料金は減るし、水を無駄に使わないことは、悪いことじゃないですよね。
みんなで節水する。これも、悪いことではないですよね。
ただ、役所は水道料金の収入が減りますね。お金がないってことは、老朽化した水道管交換が進まなくなりますね。…ということは老朽化した水道管が破裂するという事故も増えますね。…で結果的には、、、、、、そうです、老朽化した水道管交換工事費の為に、収入が減った分を値上げする=水道料金が上がるということにつながってしまうのです。

あれ、、そうゆうことなると、ただでさえ人口減少で役所の水道料金収入が減っている中で、個人で頑張って節水しても、それが結果的に、水道料金の値上げにつながり、支払う水道代は減るどころか、むしろ増えるのでは?って、なりませんか。という話なのです。(まあだからといって、「皆さん、水を多く使って、水道料金多く払いましょう!」なんて、頭の悪いことをいいたいわけではないということはあらかじめ言っておきます。)


私は、「国債を発行して、どんどん予算つかったらええやん」って前々からずっと思っているけど、世間では未だに「国債発行はけしからん。将来へのツケが~」とかわけのわからないことを言っている人や、「公共事業はとにかく悪」って思ってる人多いし、水道管についてとか、道路と水道の所轄が別とか、そういうことを理解してる人が少ないので、けっこう、諦めてます。
「老朽化した水道管がそのままで、水道管破裂事故が多発する国土」を将来へ引き渡すことの方が、よっぽど将来世代にツケを回している気がするのは私だけですか?

 

合成の誤謬個人にとっては良くても、社会全体では良いとはいえない結果になる。
そして、まわりまわって、結局個人にとっても良くない結果になる。
こういうことは、水道管以外にも存在する話なので、個人の節約然り、国の予算然り、目の前の事だけに捉われずに、大きな視野で物事を捉えて考えることは大事だよねーって、思います。

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